寒すぎだろ?
こんな寒かったら、色んなものが凍りついてしまいそうだ!
実家で暮らして居た頃を思い出す。
あれは大晦日のちょうど年が明けたくらいの時間だ。雪が積もる道をガシガシ歩いて近所神社へ初詣に出かける。あたりはきーんと張り詰めた寒さで虫の声さえ聴こえない有様だ。神社では近所のじい様方が酒を呑んでいる。お酒の匂いと湿った木の匂いとこうこうと焚かれる焚き火の匂いが新しい年が来たことを教えてくれる。
神棚に供えるお札と熊手を酒くさいじい様から買って帰ると暖かい年越し蕎麦とコタツ猫が待っている。蕎麦は海老の天ぷらだけがのったシンプルなものだ。お母さんはお年取りの料理で疲れ果てているのか蕎麦は冷凍のカトキチだ。でも汁は正月の雑煮などにも使うからお手製。ぬくもりは少しずつ身体に入ってきて小さな僕の脳内を安心させる。
神社へお祈りすることは毎年決まっている。「今年も健康でありますように」欲張らない。
人間は人間のぬくもりには浸透出来ない。ぬくもりはあたかもあたたかいように思えて冷たくも静かなものだ。
冷凍蕎麦のように。
透き通るような寒さの時間を体験したのは少年の感覚がまだ憶えている。